僕のマンションには毎年ツバメが巣を作ります。
ツバメが巣を構える家には幸運が舞い込むという言い伝えもありまので、毎度毎度フンでクルマが汚れるのですが住民の皆はおおむね好意的です。
どうやら葉山にはツバメの巣を勝手に取り除いてはいけないという条例もあるらしいので、そもそも彼らを受け入れるしかないのです。
毎年ヒナが孵っては元気に飛び立っていくのですが、今年は1羽巣から落ちてしまいました。
落ちてしまったヒナは瀕死の重傷で、僕はきっと直ぐ死んでしまうだろうと最初は冷ややかでした。
しかし一生懸命看病するマンションの子供達の熱意に動かされ、大人達もこのヒナを一緒に可愛がるようになっていきました。
ヒナは予想に反して回復し、日に日に元気になりました。
子供達は交代に生き餌をあげて世話をし、大人達は駐車場を素通りせずにヒナの顔を見てから仕事に行きました。
ヒナはあっという間にマンションのアイドルになって、お客さんからも可愛がられました。
ほどなくマンションの子供達の中から名前を決めようという意見が出て、マンションの住人がアイディアを出し、そして投票が行われました。
そして『おちょん』という、何とも愛くるしい名前が決まったのです。
おちょんは子供達のスパルタ特訓のおかげて、何とか1mくらいは飛べるところまで元気になりました。
疲れてウツラウツラ寝ている姿は、それはそれは愛くるしかったです。
元気になったおちょんは自分で箱を出て、奥内駐車場の中をヨチヨチ歩き出す様になりました。
近隣にはネコもカラスも沢山いるのでちょっと不安はあったのですが、大体誰かがいるマンションですしシャッターは閉まっているのでそのままにしていたのです。
それがいけなかった。
誰かが、駐車場でおちょんを轢いてしまったようなのです。
僕は午後の外来中にその知らせを受けました。
正直言って、とても動揺してしまいました。
あんな小さな小鳥なのに、いつの間にか僕達は心をつかまれていたのですね。
マンション中は悲しみに包まれ、子供達はみんな号泣していた様です。
子供達が全員帰ってきておちょんにお別れをして、マンションの中庭にお墓を作りました。
最近クールな子供達が多い中、ウチの子供達はみんな素直で優しい子達なのです。
だから、なお一層、子供達の気持ちを考えると僕も切なくなるのでした。
悲しみや切なさや怒りがない交ぜになって、子供達の心の中は自分では制御出来ない感情が溢れていたんだと思います。
僕もこどもの頃、兄の様な存在だった犬が亡くなった時の事を今でも思い出します。
とても辛かった。
そんな子供達に、僕はメールを書きました。
勇気づけるだけでは無く、慰めるだけでは無く、他の何かを伝えたかったのです。
メールを送った子供達はひとしきり泣いた後、元気をだして返事をくれました。
とても感動したので、そのメールのやり取りを残しておきたくなりました。
良かったら読んでみて下さい。
逆に何かを学ばせてもらった様な気持ちになると思います。
◯◯くん ◯◯ちゃん
昨日はおちょんを立派に見送ってくれてありがとう。
おちょんがいなくなってしまった事はとてもショックで悲しかったけれど、ルネの子供達がとてもとても悲しんでいた様子を聞いて僕はちょっと嬉しかったです。
それは君たちがとってもキレイな心を持っていてくれた事が改めて伝わってきたからです。
動物を愛して大事にする心を持っている事は、とても素晴らしい事です。
おちょんはみんなに助けられて、あそこまで元気になれました。
きっととても感謝していると思います。
おちょんが居なくなって、君達の心にはぽっかりと大きな穴が空いてしまった様に感じるかもしれません。
僕もそんな風な感じがします。
でもその大きな穴を埋めてくれる程、おちょんは大きな贈り物をしてくれたと思います。
弱いものを助ける気持ち。
助けた相手が立ち直る時の喜び。
そして大切な命を失う悲しみ。
それらを体験出来る事は、とてもとても大事な事だと思うのです。
僕は誰かにこんな話を聞いた事があります。
生き物の霊魂には階級があるというのです。
植物、昆虫、動物、そして人間と、霊魂はそれぞれの生涯で一生懸命頑張って生きる事が修行なんだって。
その頑張りを認められると、生まれ変わってさらに崇高な霊魂に生まれ変わる事が出来るのです。
植物、昆虫、動物は悪い心を持っていないでしょ?
ただただひたすら人間の為に自分の身を捧げて献身的に尽くしてくれるんです。
おちょんがみんなに、あんなに素敵な思い出を残してくれた事を考えると、その話はあながち嘘じゃないんじゃないかと思えてきます。
おちょんはみんなの為に一生懸命頑張って生き抜いてくれたと思います。
きっと今頃神様に実績を認められて褒められているに違いないよね。
僕も大好きだった犬が死んでしまったときの事を、今でも思い出すと涙が出てきます。
その時はとても悲しかったけれど、とても大事な経験をだったと思います。
僕はマンションの子供達が大好きです。
みんな大事な友達だと思っているよ。
みんなが悲しんでいる姿をみるのは僕もとても悲しいです。
でも嬉しかったり悲しかったり時には怒ったり、それは人間として自然な感情です。
そんな時にどう考えてどう行動するか、それはおちょんがみんなにくれた宿題だと思います。
まだサミシい日が続くかもしれないけど大丈夫。
おちょんはみんながたくさん想ってくれて、とっても喜んでいるはずです。
みんなが早く元気になってくれると嬉しいです。
そしてお返事です。
僕は子供達にウッチーと呼ばれています(笑)
メールありがと!
また泣いちゃった。
ウッチーが言うとおり、おちょんは、マンションのみんな一人一人の為に一生懸命、頑張って生き抜いてくれたと思います。
クルマにひかれたか、カラスにやられちゃったかわからないけど、もうちょっと自分が気を付けて、駐車場のシャッターにいっぱい貼り紙したりすればよかったなって後悔してます。
お母さんに引っ越してきた人がひいたかもって聞いた時は、一生うらんで、呪ってやるって思ってたし、ぶっとばして、ボコボコにしてやろうと思ったけど、夜、寝る前に考えてたらそんな事してもおちょんは嬉しくないし悲しむと思って、考えを改めてました。
ウッチーのメールにも書いてあったけど、人間の為に自分の身を捧げてくれる生き物を飼うって事は、その命を僕達は預かるって事だから、一つの命を守る責任と一つの命を捧げてくれてるって事のありがたみをこれから動物とか生き物を飼う時に大事にしようと思ったよ。
僕は、大人になってもおちょんの事を忘れません。
天国行ったらおちょんに会いたいです。
ウッチーのメールを読んで、また泣いてしまったけどもう大丈夫です。
おちょんは、今天国で私たちを見守ってくれてると思えば、この先 なにがあっても、元気でいられると思います。
そして おちょんは 何かの姿になって わたしたちとまた会えるかもしれないと信じています。
おちょんと 出会えた事を大切な思い出にして、これから 頑張っていこうと 思います。
ウッチーのメールを読んで元気になりました!
旅立つ前のおちょん。
本当にありがと。
投稿者 tsukuihama : 19:41
僕の患者さんには、比較的常連さんが多いです。
定期的に顔を見せてくれる患者さん方には(言い方は変かもしれませんが)医者の立場としても愛着が湧くものです。
自分のクラスのカワイイ生徒みたいな感覚で、どうにかして元気になってもらいたいと思うものです。
毎回顔を合わせていると、ちょっとした変化にも気がつきます。
ちょっと元気が無かったり、急に痩せてしまったり、そんな些細な事から異変に気がつく事もあります。
大したことが出来ない分、ボクの様な開業医は患者さんと地道に信頼関係を築いていかなければなりません。
僕にとっても、常連の患者さんが来てくださるという事実はとっても誇らしい事なのです。
今日はハルミちゃんの事を書こうと思います。
ハルミちゃんは自他ともに認める、立派な常連さんです。
雨の日も風の日も、朝から病院の前で順番を待つ列に並んでくれています。
ハルミちゃんはボクより年上なので本当はちゃん付けで呼ぶなんて失礼なのですが、あえて『ハルミちゃん』と呼びたくなるようなキャラの持ち主なのです(笑)
ハルミちゃんは他の常連さんのお爺ちゃんお婆ちゃんからも可愛がられている、みんなのアイドル的存在です。
長い待ち時間も、他の患者さん達と楽しそうにおしゃべりしながら待ってくれています。
みんなに可愛がられるハルミちゃんですが、実は心の病気とも闘っています。
時々どうしようも無く落ち込んでしまったり、上手く他人とコミュニケーションが取れなくなってしまう事があります。
そんな時は実際人間関係が壊れてしまったり、誤解されてしまう事にもなります。
ずっと生活を共にしている家族にとっては、大変な負担になってしまう事もあるでしょう。
そんな時にサポートするのも、僕達の役目だと思っています。
整形外科の外来にも、様々な不安を抱えて来られる患者さんはとても沢山いらっしゃいます。
性格的にとても神経質だったり几帳面な方は、心配し過ぎてしまってかえって具合が悪くなっている事も多いと感じます。
僕は心療内科の専門医ではありません。
でも、先ず話をキチンと聞いて的確なアドバイスをしてあげるだけで、殆どの方の表情は笑顔になってくれます。
そんな時、僕は心の中で小さく拳を握りしめてガッツポーズをとっています(笑)
独りで心配してるだけで損をしている方々は大勢いらっしゃると思います。
先ず、話をするだけでも楽になる事は沢山あります。
そんな良いお手本がハルミちゃんです。
ハルミちゃんは心配事があると、直ぐに病院にやってきますからね(笑)
今回ハルミちゃんの事をブログに書くにあたっては、少々迷いもありました。
心の病と戦っているという事は、普通はみんな隠したがるからです。
でもこうやって、頑張っている姿をみんなにアピールする事も本人にとってはプラスになると考えました。
本人とも良く話をしたところ、前向きにこのブログに登場する事をとても楽しみにしているとのこと。
応援する気持ちを込めて、このブログを書きました。
心と身体は強く結びついています。
どっちも元気になれるのが最高!
ハルミちゃん、ガンバッテ。
僕達も、ガンバルヨ。
投稿者 tsukuihama : 14:54
行ってきました。
来月は仕事がハードなので、ちょこっと息抜きです(笑)
初めての屋久島には、ひたすら圧倒されました。
もののけ姫のイメージが強いのですが、実際にあの空気感を体験するとちょっと人生観すら変わってしまいます。
人間がどれだけちっぽけな存在なのか、そして自然がどれだけ雄大なのかが良く解ります。
そして、神はに存在するんだなと実感。
今回は軽いトレッキングだけでしたが、次回はもののけの森、そしてそのうち縄文杉まで行ってみたいと思います。
でもその前に、ちゃんとトレーニングしないとダメだな…
大川の滝(日本の滝百選に選ばれています)
滝壺の直ぐそばまで行く事ができるので、大迫力&マイナスイオン浴びまくりです!
屋久杉ランド ちょっと入っただけでこの大自然です
大気に生命が満ちあふれている感じ
小さな葉っぱ一枚でも凄い生命力です
ヤクシカさんにも沢山会えます
可愛らしい目の中に吸い込まれそうでした…
投稿者 tsukuihama : 16:12
この前ちょこっと書きましたが、僕の患者さんがなかなか具合が良くならず、とある病院に紹介しました。
そこで治療をする予定だったのですが、担当したお医者さんと折り合いが悪く直ぐに退院してきてしまいました。
当然の事ですが、治療が進んでいないので痛みは取れていませんでした。
仕方が無いので僕の外来で地道に治療を続けようと思ったのですが、ご本人は僕が週に2日だけ行っている千葉の病院に入院したいと言うのです…
千葉と言っても九十九里と銚子の中間。
横須賀からは片道100kmの大移動です。
僕がずっと千葉に居れる訳でもありませんので最初はお断りしようと思ったのですが、半分押し切られる様な形で了承しました。
結果的には治療は上手く進み、患者さんは痛みも取れて無事退院。
今は横須賀に戻ってきて、リハビリで症状は安定しています。
この患者さんはイランから単身日本にやってきて、今まで随分苦労してこられた方。
遠いこの異国で暮らしていくだけでもとても大変でしょう。
色々な差別や偏見にも苦しめられたと思います。
そんな辛い思い+病気の痛み。
より一層辛かったと思います。
言葉や風習も違う国でもし病気になったら。。。
自分の身に置き換えて考えただけで、とても心細くなります。
患者さんごとに異なる生活環境や心情や考え方は様々です。
僕ら医者、はなるべくそれらを理解しなければならないのですね。
僕も自分自身も心や気持ちにゆとりが無い時は、残念ながらそこまで対応しきれない事もあります。
でも今回は何とか患者さんの気持ちを受け入れる事が出来ました。
そして上手く信頼関係を築く事が出来たんです。
『今まで診てくれた先生はいつも僕の奥さんと話した』(奥さんは日本人なんです)
『先生は初めて僕と直接話してくれた』
『だから僕は先生を信じるよ』
患者さんがそう言ってくれたとき、僕は本当に嬉しかったです。
入院中ベットサイドまで行くと、その患者さんがイランの紅茶を振る舞ってくれました。
『イランのセイロンティーはカフェインがいっぱいで、とっても疲れがトレルヨ!』
そして特別の飲み方を伝授してくれました。
イランの角砂糖を口に放り込み、その角砂糖を口の中で溶かしながら紅茶を飲むのです。
ー紅茶の国からやってきた師曰くー
日本では紅茶の中にお砂糖を入れて飲みますが、それでは紅茶の味が台無しになってしまいます。
この飲み方なら最期まで紅茶の風合いが保たれます。
トノコト。
成る程、仰る通り。
ポットから紙コップに入れてくれた紅茶でしたけれど、これがまたとっても美味♡
その日は患者さんの急変もありホントウニヘトヘトだったので、角砂糖の甘さとカフェインたっぷりの美味しい紅茶が疲れた身体と凹んだ心に染み渡りました。
外来ではなかなか時間が取れず、患者さんとゆっくり話す機会もありません。
こうやってお茶を飲みながら他愛も無いおしゃべりをする。
とても贅沢な時間でした。
こんな時に、僕はとっても幸せだなぁって思うのです。
写真は、今年もダイヤモンド富士を撮影してきて下さった大井千代子さんの1枚。
清々しい気持ちにぴったりの1枚です。
投稿者 tsukuihama : 00:22
またしても、久しぶりの更新。
申し訳ございません。。。
最近実は僕、かなり凹んでいた様です。
精神的にも肉体的にも…
僕は12年間一人っ子で育ち、初孫だった事もあり、家族や親戚一同に随分可愛がられて育ちました。
皆に注目されて育ったせいでしょう、おかげ様でとっても自己顕示欲の強い人間になってしまいました。
まぁカンタンに言えば、とっても外面の良い見栄っ張りと言ったところでしょうか(笑)
どんなに疲れていても機嫌が悪くても、外来が始まれば『ココは僕のステージ』『僕はスターなんだ』と自分に言い聞かせて笑顔で頑張ってしまいます。
そんな心意気でガンバルのはとっても良いことだと思うのですが、患者さん達から期待されればされる程無理をしてしまいます。
沢山の患者さんに頼られるのは医者冥利に尽きるのですが、そこにはかなりの精神的な消耗もついてまわるのですね。
自分のコンディションが良くないと、患者さんに対しても良い医療を提供する事が出来ません。
僕の病院での医療レベルなんて決して高いものではありませんが、患者さんに優しい気持ちで接する事が出来なくなるのがとても怖いのです。
そこが一番のジレンマと言いますか、自分の中でのせめぎ合いなのです。
そんな事を思いながら仕事をこなしていたら、随分と疲れてしまった様です。。。
僕達開業医の役割は、例えて言うならば商店街の小さなお店の様な立場だと思っています。
大きな百貨店と違った、お客さんと密に信頼関係を築き上げられる様なサービス、つまり地域医療を提供することです。
それが出来なければ、僕の存在意義なんて無いのですよね。
つい最近僕が治しきれない患者さんを、大きな病院に紹介しました。
これは、やはり僕にとっては悔しい訳です。
自分では痛みをとってあげられないと、事実上の降参ですから。
でもその患者さんは、紹介先の医者や看護士さんと折り合いが悪く自主退院してきてしまいました。
恥ずかしながら紹介した先でその患者さんを診たのは、僕の後輩でした。
患者さんの言い分も、また後輩や看護士さんの言い分もどちらも良く解ります。
僕も大きな病院でふんぞり返って偉そうにしていた時期があるからです。
でも後輩達には、やっぱりもうちょっときちんと患者さんと話をして欲しかった。
患者さんとの良い関係を築き上げるのには、とても長い時間がかかります。
でも、それを崩すのは一瞬なのですよ。
心も身体も疲れている時にこんな事があると、なんだかとっても切なくなります。
自然に涙が出てきちゃったりしてね…(おいおいもう40歳だろ)
でもまあ、なんとか元気になってきました。
僕の心の師匠はブラックジャックです。
という事は、つまり手塚治虫先生ってことです。
手塚先生がブラックジャックの中で伝えてくれるメッセージに、僕は励まされ、慰められ、気合を入れられます。
ブラックジャックも、悩みもがきながら患者と向き合っています。
そんな人間くささが、僕は大好きなんです。
病院に来られる患者さんは、みんなどこかに痛みや不安を抱えて居る訳ですよね。
でも心配しないで下さい。
医者だって同じです。
毎日毎日、いろんな事を心配しながら生きていますから(笑)
今日はブラックジャックの中に出てくる、大好きなセリフを紹介させて頂きます。
これは、ブラックジャックの心の師匠である本間丈太郎が亡くなる前にブラックジャックを諭す言葉です。
この言葉を最期に、本間丈太郎は意識を失います。
なんど読んでも、このエピソードには心を揺さぶられます。
宗教的でもあり哲学的でもありますが、僕は医者でいる限りこの言葉を忘れない様にしたいと思っています。
『人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね…』
手塚先生のお陰で、今日も医者をやらせてもらってます。
投稿者 tsukuihama : 18:45